更年期に差しかかると、体重が増えやすくなると感じる女性は少なくありません。主な原因としては、エストロゲン（女性ホルモン）の減少や加齢に伴う筋肉量の減少、睡眠不足・ストレスなどの生活習慣が挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合い、気づかないうちに体重が増加してしまうこともあります。しかし、対策をしっかり理解し実践することで、更年期太りを最小限に抑えることは十分可能です。本記事では、更年期に太りやすくなる原因と、その具体的な対策について詳しく解説します。

更年期太りの原因1：エストロゲン（女性ホルモン）の減少

エストロゲンは、筋肉量の維持や脂質代謝を調節するなど、女性の体内バランスを大きく支えるホルモンです。しかし、更年期に入るとエストロゲンの分泌が急激に減少し、以下のような変化を引き起こします。

• 筋肉量の減少による基礎代謝の低下
• LDLコレステロールや中性脂肪の増加
• 食欲抑制機能の低下による食べ過ぎ
• 腹部脂肪の蓄積（内臓脂肪がつきやすくなる）

これらの変化が重なると、体重増加が進みやすくなります。特に腹部肥満が目立つようになるため、「更年期太り」と呼ばれる症状が強く意識されるようになります。

更年期太りの原因2：加齢に伴う変化

加齢は、更年期以降の体型変化にさらなる影響を及ぼします。総務省統計局のデータによると、日本人女性の体重は40代以降で増加しやすく、50代に入るとさらに上昇傾向があります。また、厚生労働省の資料における基礎代謝量の推移からも、年齢を重ねると1日の代謝量が少しずつ減っていくことがわかります。

• 30代：53.7kg（158.3cm）
• 40代：54.6kg（157.8cm）
• 50代：55.2kg（155.9cm）

基礎代謝量の目安は、30〜49歳で約1150kcal、50〜69歳で約1100kcal、70歳以上では約1020kcalにまで低下すると報告されています。筋肉量の低下や自律神経の乱れによる活動量の減少、睡眠の質の低下が重なることで、体重コントロールが難しくなるのです。

更年期太りの原因3：生活習慣・遺伝的要因

更年期太りは、ホルモン変化や加齢だけでなく、生活習慣や遺伝的要因も深く関わっています。例えば、偏った食事や睡眠不足が長期間続くと、代謝が乱れやすくなるうえ、食欲が増進して高カロリー食品に手が伸びがちです。また、家族に腹部肥満の傾向がある場合は、同様の体質を引き継ぐ可能性があります。ストレスが多い生活も、コルチゾールの分泌を促進し、脂肪蓄積や筋肉量の低下に影響を与えることがあります。

効果的な対策1：食生活の改善

更年期太りを防ぐうえで、最も基本となるのが食生活の見直しです。まずは以下のポイントを意識してみましょう。

• 栄養バランス：野菜、果物、全粒穀物などの栄養価の高い食品を中心に、タンパク質や良質な脂質も適度に摂取する
• 加工食品・砂糖・アルコールの控えめ摂取：高カロリーかつ糖質が多い食品は、血糖値を乱し脂肪蓄積を促す
• 食物繊維の積極摂取：腸内環境を整え、余分な脂肪や糖を吸収しにくくする
• タンパク質摂取：筋肉量を維持・増加させるために、肉や魚、大豆製品などをバランス良く取り入れる

また、「地中海食」や「低GI食」のような食事法も、更年期における体重管理や生活習慣病予防に役立つとされています。特にオリーブオイルやナッツ、豆類を中心とした地中海食は、心血管疾患やメタボリックシンドロームなどのリスクを低減するとの報告もあり、健康面のメリットが期待できます。

効果的な対策2：定期的な運動

加齢により低下していく基礎代謝量を維持・向上させるためには、運動は欠かせません。特に有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが効果的です。

• 有酸素運動：ウォーキングやジョギング、水泳など、週150〜200分の中強度の運動を目標にする
• 筋力トレーニング：スクワットや腕立て伏せなどの自重トレーニングを、週2回以上行う
• 日常での活動量アップ：エスカレーターより階段を使う、こまめに立ち上がるなど、小さな習慣の積み重ねが重要

筋力をつけることで基礎代謝が高まり、脂肪が燃焼されやすい体質へと近づきます。また、有酸素運動には心肺機能を高める効果があり、更年期症状の緩和やストレス解消にも役立ちます。

効果的な対策3：生活習慣の改善

食事と運動に加えて、毎日の生活習慣を整えることも重要です。特に、以下の2点が更年期太りのリスクを減らすカギになります。

• 睡眠の確保：十分な睡眠は、食欲抑制ホルモンの分泌を正常に保ち、暴飲暴食を防ぐ効果がある
• ストレス管理：ストレスが溜まるとコルチゾールが過剰に放出され、脂肪蓄積や食欲増進を招きやすい

睡眠やストレスのコントロールにより、体内のホルモンバランスを整えながら、余計な食欲や疲労感を軽減することが期待できます。

ホルモン療法とその他のアプローチ

更年期特有の症状が強い場合、医療機関でホルモン療法（HT）を受ける選択肢もあります。ホルモン療法は、更年期障害の主な症状であるほてりや寝汗、不眠などの改善に役立ちます。これにより睡眠の質や生活の快適度が上がり、結果として体重管理を続けやすくなることが期待できます。ただし、ホルモン療法自体が直接的に体重を減らすわけではないため、食事・運動などの基本的な対策と合わせて検討することが重要です。

まとめ

更年期太りは、ホルモンバランスの変化や筋肉量の減少、生活習慣など、多角的な要因が関係しているため、対策を複合的に実践することが大切です。まずは栄養バランスのとれた食事と適度な運動を習慣化し、睡眠やストレスの管理を意識することで、代謝機能やホルモンバランスを整えやすくなります。さらに、ホルモン療法などの医療的サポートを取り入れることで、更年期特有の不調を軽減し、生活全体を整えるうえでの大きな助けとなるかもしれません。こうした対策を組み合わせることで、更年期の体重増加リスクを抑え、健康的な身体と心を維持しやすい環境を作ることが可能です。